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16 5月, 2016

山﨑健太郎 展「今、建築にできること。」レポート

5月13日より南青山のプリズミックギャラリーで開催の山﨑健太郎の個展「今、建築にできること。」に行って来ました。
山﨑さんは、国内外の数々の建築賞を受賞するなど若手建築家として注目されており、今回初の個展となる。

 展示されるのは、切実な社会背景を持ったプロジェクトたち。
山﨑健太郎デザインワークショップとして、これまでオフィスビル、住宅、インテリアなどのプロジェクトを手掛けてきたが、それらはここでは紹介されていない。

 子ども、高齢者、障がい者など、特殊な居場所を必要とする人たちのために問題に真摯に向き合い、クライアントや地域住民等と共に相応しい建築を導き出す、山﨑健太郎デザインワークショップのこれまでの活動と現在進行中のプロジェクトを知る機会となっている。


 展示されるのは5作品の模型と、その写真やスケッチ。


 奥の壁面では、本展テーマの切っ掛けとなった3作品を紹介。


 〈糸満漁民食堂〉沖縄, 2013
漁民文化を伝えるためのレストラン。

 かつて沖縄の漁民が琉球石灰岩を手積みで自分たちの漁場を作ったように、石積みワークショップを開催して、関係者と地域住民の手によって構築できる石積みの建築とし、漁民の誇りと愛着に支えられた場所を目指した。


 〈さやのもとクリニック〉 佐賀, 2014
認知症とその家族のためのクリニック。

 患者とその家族が病気とつきあっていくための「学び」の場として、30mもの本棚がある待合スペースを設えた。


 〈はくすい保育園〉千葉, 2014
こどもたちのための場所

 地域性やユーザー(こども)優先を旨とし、幼少期の感覚が育まれるに相応しい場所をつくることを目的とした。
斜面に建つ建物のため、室内の段差は大人から見れば危ないと感じるが、子供にとっては楽しい遊具となる。南北(下・上)に開放できるサッシュと重力換気により、林立した柱の空間を風が抜けていく。傾斜した屋根を冷却する井戸水の雨は下でジャブジャブ池になる、といった場所の特徴がこどもたちの原体験となる。

 〈視覚障害者のための就労支援施設〉2018年竣工予定。
視覚障がいを持った方が社会生活を取り戻すために、自らが肯定できたり、あるいは肯定されるような場所を目指す。

 緩い起伏を持った床面で視覚に頼らない空間を形成する。コンテンツは現在企画中だが、例えば視覚に障がいを持った方の嗅覚を生かし、コーヒーメーカーと連携して香り豊かなコーヒーを開発するという働く場などがあがっているという。


 〈高齢者とこどものための宅幼老所〉千葉, 2017年竣工予定
超高齢化社会をむかえる中で、介護と家族の疲弊をどう考えていくか。

 施設ではなく居場所として、介護を支えていくための建築に挑戦。
敷地なりだがヤギ小屋、子供食堂、工房、エディブルガーデンが縁側のように連なったリニアなプラン。ストローベイル工法の土壁になる予定。

 会場の壁には様々な言葉を並べたパネルが。
クライアントが言ってくれた言葉、後で勉強した言葉など、今まで手掛けたプロジェクトにおいてキーワードとなったものだ。特に、今や「プロジェクト」と言い換えられてしまった「普請」という言葉はこれからも使って行きたいそうだ。

山﨑健太郎さん。
「これらプロジェクトを手掛ける機会に恵まれ、建築家が抱えている社会との接点を見つめ直すことができました。建築をつくるだけではダメだという現実に向き合うことにもなりました。本展を通じて、率直に、建築ができることはまだ沢山あるという僕らの想いが伝われば嬉しいです。本質的な魅力のある建築をこれからも作っていきたいです。」

山﨑健太郎 展 「今、建築にできること。」】
会期:2016年5月13日~6月24日
会場:プリズミックギャラリー

トークイベント「建築修道僧のすすめ」
日時:2016年5月18日  19:00 ~21:00
登壇者:富永譲、澤岡清秀、山﨑健太郎 
会場:建築家会館
入場料:1000円
参加申込み先:info@ykdw.org(山﨑健太郎デザインワークショップ)

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